アキエノート

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レビュー:少女七竈と可愛いそうな大人

桜庭一樹の「少女七竈と可愛いそうな大人」を読みました。

美しい少女七竈と美しい少年雪風の成長と いんらん母親に関係する人々のお話です。 桜庭一樹の青春(?)小説。

テンションが上がるような雰囲気の本ではありませんが、文章から人物像を想像するのが楽しくなる小説でした。

美しい少年少女と一定のテンションを楽しみながら、読みたい人は是非。

「七竈」という木をこの本を読んで知りました。 七竈というのは落葉高木で、バラ科らしいです。 Wikipediaの写真を見ると青々とした木に赤い実がなっています。 物語の中では、この七竈の木には雪が積もり、赤々とした実と真っ白な雪、雪埋められた緑が繰り返し出てきます。

この本を読んで思ったことは、白雪姫みたいだなぁ…ということ。 物語全体が似ているということではなく、少女七竈の美しいかんばせが何度も登場しますが、その例えがまるで白雪姫のようだと感じました。

美しいかんばせの少女七竈と少年雪風。 異母兄弟だった二人は、恋愛感情を持っていたというよりも双子のような関係に近かったのかな?と思いました。 なので、七竈が上京することを知った時、七竈を叩いたのかと。 いつも一緒だった双子の片割れがいなくなって、自分が不完全じゃなくなると思ったから…。

この本の楽しかったところは、登場人物を想像していくところ。 七竈や雪風、いんらんな母親、乃木坂レナ…それぞれがどんな容姿をしていて、どんな人物像かをパズルのように想像して行くのが面白かったです。 七竈の美しいかんばせ、長くだらりと伸ばした黒い髪、独特の口調、これだけで自分だけの「七竈」という登場人物ができあがります。

おしいのは、中に挿絵が数ページ入ってたところ。 せっかく登場人物を想像させる文章なのに、ぼかしながらおぼろげに書いたであろう挿絵が登場人物を形にしてしまっていて勿体無いと思いました。

それから、素敵な装丁でした。 今度は装丁した人を調べてみたいです。

ドロついてはいないけど、静かなテンションの青春小説を読みたい方は是非。