アキエノート

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レビュー:晴天の迷いクジラ

窪美澄の「晴天の迷いクジラ」を読みました。 3人の紆余曲折を経た主人公たちがクジラを見るという一つの目的を果たす物語。 少し重たい、それでも生暖かいような光が見えるような本でした。 ちょっと疲れてるけど、気晴らししたい人にオススメです。

晴天の迷いクジラ (新潮文庫)

晴天の迷いクジラ (新潮文庫)

窪美澄の本は始めて読みました。 本屋で物色しているとき、たまたま目に入った本で立ち読みしてみました。 表紙は制服を着た女の子が眩しそうに空を見上げているような表紙。 正直、写真の人物が苦手な私には手を取りにくかったのですが、題名にかなり引かれました。

「クジラが泳ぐ姿って気持ちいいよなあ」とか思いながら、開いた目次の1つ目が「ソラナックスルボックス」聞き慣れた薬の名前…。 とりあえず、そこだけでも読もうと思ってパラパラと数ページ読むと、どんよりとした暗さのある内容。 そして、興味が湧いて来て、購入しました。

中身としては、由人、野々花、正子の別々の場所と理由で、自殺を考えた3人が偶然出会い、クジラを見に行くという一つの目的を3人で達成する話。 由人は仕事と失恋で鬱になり、野々花は恋と出産と育児でノイローゼになり、正子は束縛が強すぎる母と親友との死別。 3人とも重すぎる何かを背負っています。 私は、野々花と正子の章を読んでいて、あぁ〜と思ってました。 そうそう、きっとこんな感じだ。という納得に近い感じ。 特に正子の章は「そりゃー親がこうだと、子どもは困るわな!」という気持ちで読んでました。

3人がクジラを見に行って、しばらく泊まらせてもらう、おばあさんと息子の2人暮らしの家。 なんだか、のんびりと時間が流れ、人のいい二人にだんだんと3人がほぐされ、ゆっくり身の内を明かして行くところが好きでした。

正子が最後に「お母さんと離れたい」と言う場面は正子の勇気ある行動にジワッときました。

最後の締めくくりは、一度は死のうと思った3人には日常が戻ってくるものの、死ぬ前とは別の日常になるという締めくくりです。

病んでるときに読んで、物語を咀嚼してみたら結構甘い。 そんな本でした。

疲れてる方はぜひ。